絵描鬼〜エガキ〜第四回『開』
2005、3、5
絵を描いて行く上でバタバタつまづく七転八倒と面白毒づき綴っていく短期連載絵描鬼。
第四回は「開」。
前回話したマンガ家の卵のU氏と会談した際に色々感じた事をまとめて行こう。
そもそもU氏との出会いはある日ヒョンとした事から。(ヒョンって何だ?
ある日、旧友が仕事中に唐突に電話を掛けて来た。
「マンガ家と知り合ったんだけど、マンガ描き仲間探してるんだって言うんで紹介したよ〜」
相変わらず勝手な奴だが、それよりしばしマンガ談義などする関係が始まった。
聞けばU氏は赤●ジャンプ(一応伏字)に掲載経験があり、本誌連載を狙うセミプロである。
そんな強大な相手との会談は戦いであり、そしてソレは会う前から始まっている。
即ち前述した己の画力コンプレックスとの戦いである。
相手は商業誌に載り、しかもかなりの実力派の模様。
自分は近年ダブルパロディしか創作しておらず、模写ばかりしている身ではセミプロ相手だと肩身が狭い。
正直コンプレックスに押しつぶされそうな俺は意を決して…!
友人に泣きついて愚痴った(笑)
皆のフォローから俺は
「笑いの為なら手段を選ばないのが俺のスタイル」と言う事を思い出し、
同人誌数冊と、自分の絵柄であるカラーイラストを準備し、「コレが俺なんだっ!」と気をしっかり持つ。
そして会談当日。以上の物と話のネタ用に人体資料本とミクロマンを持ちU氏と合流、ファミレスへ向かう。
U氏はイラストや先日編集と打ち合わせた設定や、どうしても描きたく貯めてある必殺のネームなどを見せつつ、
作風がジャンプの現状とはあわせづらいので止まってるが年内には連載を取ろうと言う近況など話してくれる。
コイツは予想以上に強大だっ!?
とりあえず意気消沈する前に同人とイラストを見せ、ついでにデッサン本とミクロマンも出してみる。
したら物凄い食いつきで興奮するU氏。
とりあえず絵についての話題になり、話も進みやすくなった事に安堵した俺だったが…
U氏の人体資料への貪欲な欲求のを見て、俺は羨望と、羞恥とを同時に覚えた。
俺は達人のU氏がこんなにも奮い立つ本を持っていながら
俺はそこまでの興奮を覚えられていなかった!!!
再び身を正そうと改めて思い返し、これはU氏の話を素直に吸収した方が良いと思い色々教わった。
要らない気負いを捨てて話していると大変タメになる話ばかりで
書道から引用した肘を使って外に線を引く引き方、
陰影を筆圧で表現する技、
自分は筋肉を描いてから人を描くのに対し、(裸に服を着せて描くのと同じ原理)
氏は人体を研究しまくった上で、マンガ的な線を引くスタイルの差の意見交流など極めて勉強になる。
そして画風の話になるが、俺の絵への意見がまた興味深い。
「もっと目とかアニメ風にディフォルメすれば安定するのに」と氏
「写実から落としてるんでワザと多少リアル風にしてみてるんです」と俺。
そこで氏は
「でも読む側の気持ち良さを考えるとディフォルメした方がいいですよ」
ガーン!
俺は大きな衝撃を受けた。
確かに俺は自分の絵を描くだけで読む側のカタルシスを一切考えていなかった!(一切かよ、俺w)
ここでイラストレーター的スタンスとマンガ家的スタンス、どっち付かずだった自分に気づかされる。
氏の極めてマンガ的ビジネスライクな思想と鍛えられた画力に凄く刺激を受けた会談であった。
自分はとりあえず描きたい物は形にしてみようと言うアドバイスの元、
次回には完全創作を見せたいですねと言って別れた。
同時にU氏が連載取ったら名前載せてもっと仲良くして貰おうと言うミーハーなアイディアも閃いたが(笑)
最後まで残したが今回のタイトル「開」は「悟りを開いた」訳でもなく、「何かに開眼した」と言う程大仰でもなく、
おせん風に言うの所の「やっと薄目が開いた」と言う程度だろう。
しかし氏との会見により何かは確かに開かれた。
そんな気がした。
オマケ
「AN ATRAS ANATOMY FOR ARTISTS」
人体の骨格、筋肉がさまざまな状態で図解されていたり、
走る、投げるなどのコマ送り写真や筋肉の動き、
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